かんとくの日記

Gooブログ移民。東京在住会社員の音楽・演劇・本・旅などのゆるゆる備忘録。 Since2008

人類とエネルギーの関係史: 古舘恒介『エネルギーを巡る旅』(英治出版、2021)

参加している読書コミュニティでの課題本でした。

環境問題、原子力発電問題など、世界的・地球的な課題について、エネルギーと人間の関係史の視点から人類史的スケールで捉えることを学べる一冊です。日頃は個人的に苦手意識のある切り口ですので、社会や人間を見る新しい思考の軸を得たという感覚です。

数十年前に学校教育で学んだはずのファラデーの発見や熱力学の第一法則、第二法則(エントロピー増大の法則)らの記憶の残骸を辿るのと併せて、現代社会の中でそれらの法則が持つ意味合いや、適用のされ方を知ったのは新鮮でした。

本書を通して、エネルギーについて探求し、解明し、利活用を進めてきた人間の英知に対する敬意とともに、際限のないエネルギー消費を求める人類の欲への恐怖を感じます。「環境負荷を全く気にすることなく人類が好き勝手に使ってよいような完璧なエネルギー源など、そもそもこの世には存在しない。・・・エネルギー獲得に関してもっと謙虚にならなくてはなりません」(p.264)を共通認識とすることの重要性には強く首肯できます。

また、残された時間を考えると「エネルギー資源の枯渇問題よりも人為的な気候変動の課題の方が重要度が高い」(p.308)ということや「コロナ禍による世界的経済停止による二酸化炭素減少量はパリ協定が求める水準に遠く及ばない」(p.324)との指摘は、地球・人類の未来について悲観的・ネガティブな気持ちにならざるえないところです。

そんな中、足元で私たちが今、何ができるのか、何をすべきか?この問いに対する筆者の主張は、エネルギー史の解説の切れ味と比べると弱い気がします。「安易な技術革新信仰を捨て、より深いところでエネルギー問題に正対する」ことが説かれ、「身体のリズムに耳を澄ます」、「粋・気障・野暮に通じる江戸庶民の生き方に学ぶ」、「お金を介さないギブアンドテイクの生活の取入れ」、「節約」と言った提言が記されます。

コロナ禍による経済停滞時ですらCO2削減目標には届かないという現実の中で、現代人のエネルギー消費の勢いに対して、この提言の実効性には無力感を感じざるえません。

それほど、現代人にとってのエネルギー問題は一筋縄ではいかない難しい課題なのでしょう。実効性うんぬんを語っているようではだめで、まずは行動を起こすことが大切ということなのでしょう。

まずは、これまでのエネルギーとの人類の関わりについて知るだけでも、本書の価値は十分にあると思います。