
先月読んだ松岡正剛氏の『誰も知らない世界と日本のまちがい』に紹介されていたので手に取ってみた。同名で映画化(監督アンジェイ・ワイダ)もされていて、映画の方も評価が高いようである(原作は1947年、映画は1958年)。
内容は、第2次世界大戦終戦期のポーランド地方都市における、1945年5月5日からの4日間の様々なポーランド人の出来事を描いた「歴史」小説(松岡氏は「ナチス占領下のポーランドを描いた作品」と紹介しているが、正確にはナチス占領後のポーランドである。)。ソ連の支援を受けるポーランド労働者党の人々、青年運動家(テロリスト)たち、支配者側に協力した収容所帰りの元判事とそれを知らない家族、旧体制の貴族達など、広い社会階層、年代層の多くの登場人物が同時並行的に描かれ、当時の時代の空気がうまく切り取られている。
ポーランドへはプライベートと仕事で一度づつ、訪れたことがある。ポーランド人はとても好印象だったが、戦争で破壊されつくした後に再建された綺麗な「旧市街」や、いかにもソビエト社会主義の名残りと言えるような権威的で無機質な建築物などを見て、この国の困難な近現代史が容易に想像できた。本書が描くのはそのごく一部であるが、そうした困難が肌感覚で理解できる小説である。
背景、テーマは重いが、文章は会話も多く、読むことは難しくない。万人にお勧めできるとは言えないが、第2次大戦期の東ヨーロッパに関心のある人には一読をお勧めしたい。